就活スタート号 保育・幼児教育系学生版
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にいたとき、子どもたちの間でかけっこが流行ったことがあります。ある日、走り回る子どもたちが「先生、ピアノも!」と言い出したので、「かけっこにピアノ?」と思いながらも、その様子に合わせてリズミカルな音を即興で奏でてみました。それが子どもたちに大ウケで、毎日リクエストされることに。何度も弾くうちにメロディーが定まり、1つの曲のかたちになっていったのです。子どもたちの間では、その曲が聞こえたら園中を駆け回るという遊びが完全に定着しました。あるときなど、友達とケンカをしてわんわん泣いていた男の子が、その曲が流れ始めた途端に「行かなきゃ!」と涙をふきながら走り始めたこともあったくらい。理屈を超えた力を持つ音楽を子どもの日常に溶け込ませることで、意外な反応が生まれることもあるのです。僕がその保育園を退職したときには、「明日からその曲がないと子どもたちが悲しむ」という話になり、テープに曲を録音して園長先生にお渡ししたのを覚えています。保育の仕事では「本当の自分」が試される 今は大学で教える立場として学生さんと話す機会も多いですが、近頃の若い人は本当に「いい子」が多く、それがゆえに失敗を恐れている気がします。保護者にきちんと対応するとか、職場で先輩に怒られないようにするとかいったことも大切だけれど、そこだけに力が入ってしまうのはどうなのかな。 僕が思うに、「自分が何を感じてどう生きているのか」がそのまま反映されるのが保育という仕事。例えば、泣いている子がいたときに、駆け寄って話を聞くのか、黙って抱っこするのか、涙をふいてあげるのか、横に並んでその子と同じ方向を見るのか……。正解がないだけに、毎回「あなたならどうする?」と試されているわけです。自分の生き方や感じ方、そして経験によって、「自分は子どもをこんなふうに受け止めたい」という軸が次第にできてくるはず。だからこそ、自分を見つめて、自分で考え続けることが大事なのです。 学生である皆さんが、保育者として未熟なのは当然です。でも、最初は未熟なままで子どもの前に出なくちゃいけないし、今のあなたの実力以上のことはできません。無理に背伸びするのではなく、自分で考えることを積み重ねていけば、子どもはちゃんと見ていてくれますよ。『にじ』を弾き語りする新沢さん。軽やかな演奏に優しい歌声、豊かな表情……。大人から子どもまで、どんな聞き手も魅了する力にあふれています。25

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