就活スタート号 保育・幼児教育系学生版
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 幼稚園時代の担任だった先生の影響で、保育の道を志したという中島さん。大人になった今でも、その先生のことは鮮明に記憶している。 「いつでも真剣に子どもの話を聞いてくれる優しい先生で、登園するのが楽しくて楽しくて。大好きな先生にかまってもらうため、怖くもないのに節分行事の鬼を『怖い!』と言って抱き付いてみたり、友達と園を抜け出して探してもらったり。思い起こせば、迷惑ばかりかけていた気がします」 「あの先生のようになりたい」という思いは、中島さんの心に残りつづけた。高校時代のボランティア活動を通してあこがれは確信に変わり、高校卒業後は保育の専門学校に進学した。 「専門的に勉強を始めてみると想像以上に学習量が多く、保育の仕事はイメージよりずっと大変だということに気づきました。さらに保育実習が始まると、担当した2歳児クラスには特定の保育者にしか懐かない子どもが多く、思うように関係性が築けなくて……」 「このままうまく関われなかったらどうしよう」と、中島さんは途方に暮れた。その苦しい時期を支けたのです」 思いがけない言葉に喜び、ついつい内定を得たような気持ちでいた中島さん。しかし、2カ月後には筆記・実技・面接の3つがそろった採用試験があることを知らされる。 「試験の詳細がわからなかったので、他園の筆記試験を参考にいくつものテーマで小論文を書いたり、ピアノの弾き語りを練習したり、面接対策をしたり……。自分では万全の対策をしたつもりでいました」 ところが、当日に行われた筆記試験の内容は、まさかの「一般常識」だった。 「問題冊子をめくって、頭が真っ白になりました。筆記試験=小論文だと思い込んでいたので、事前の対策はほとんどゼロ。四字熟語や干支、祝日など自信がない問題ばかりで、もうどうしたらいいかと。学校で一般常識の授業も受けていたのに、自分にはあまり関係ない内容だと思い込んで真剣に取り組んでいなかったことを後悔しました」 ピアノの弾き語りや面接は難なく終えたものの、筆記試験の自己評価は楽観できる結果とはいえなかった。すでに10月も終わろうとしており、内定が決まり始めた友人たちの笑顔を目にするたびに、中島さんの胸には不安が募っていった。 不安が残る試験から1週間ほどたった頃、中島さんのもとに内定通知が届いた。 「面接で保育実習での経験を熱弁したので、その気持ちが伝わったのかなと思いました。理想的だと感じた園で働けると決まった瞬間は、本当にうれしかったです。その後、内定先の園で放課後のアルバイトを始め、夕方5時までの実習ではわからなかった遅い時間の保育や保護者対応などにふれて、毎日新鮮な驚きを感じています」 そう微笑む中島さんの表情からは、すでに社会人としての誇りが垣間見える。 「私が園児だった頃、鬼が怖いふりをしていたことも、見つけてほしいがために脱走したことも、あの先生にはすべてお見通しで、それでも私の気持ちをくみ取って丁寧に対応してくれたのかもしれませんね。私も子どもたちの心の動きに敏感になり、ふとした瞬間に発する『小さなサイン』を見逃さないで対応できる保育士になりたいです。少しでもあこがれの先生に近づけるよう、子どもたちと一緒に成長していけたらいいな」えてくれたのは、実習園の先生方だった。親身になって一緒に試行錯誤してくれる手厚いフォローで、制作活動も無事に乗り越えることができた。責任実習では、子どもたちの反応も上々だったという。 「実習園の先生方からは『クレヨンでの着色だと手が汚れてしまうから、折り紙を活用したら?』といった、私にはなかった発想を学ぶことができました。最初はつらかった実習も最終日には楽しいと感じられるようになり、ここで働きたいという気持ちが芽生えました」 実習園は偶然にも中島さんの妹の母園で、自身にもなじみ深い場所だった。裸足保育を実践し、子どもたちがのびのびと過ごす温かな雰囲気や、小規模で一人ひとりをしっかりと見られる環境に魅かれた。「就職するならここしかない!」と心を決めたものの、「ここでは辞める保育士がいない」という情報を耳にした。もしやと思って確認してみると、園の求人情報がまったく出ていない。 「ショックでした。しかし、あきらめきれない思いで迎えた実習最終日、園長先生から『ここで働きませんか?』と声をかけていただ私は実習を通して内定先の園の保育を体験し、その保育観や方針に魅力を感じて「ここしかない!」と思える園を見つけることができました。逆に、少しでも迷いがあるときは、あいまいな気持ちのままで1つの園に絞るのではなく、複数の園見学を行い、「本当にここで働きたい」と思える園を探すことが大切です。特に2年制の学校では時間的余裕が少ないため、1年目から積極的に動き出すことをお勧めします。後輩たちに伝えたいこと大好きな先生に会いたい!その一心で通っていた幼稚園子どもが発する「サイン」確実にキャッチしたい志望園はまさかの募集なし?就職活動は「想定外」の連発『むしばいっかのおひっこし』作・絵:にしもとやすこ 出版社:講談社歯磨きのせいで食べ物がなくなってしまった虫歯の一家は、引っ越しすることを決意。虫歯不動産で「甘いお菓子が大好きで歯磨きをしない女の子」という優良物件を紹介してもらいます。その口の中のおいしそうなこと! 虫歯目線で描かれたユーモアたっぷりのストーリーは、子どもたちとお芝居を楽しむのにもぴったりです。私が選んだオススメ絵本先輩たちのホンネ 〜私たちがめざす保育士というシゴト〜33

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