本社ビルの建て替えを含む 新たな街づくりがスタート準大手ゼネコンの一角として名高い戸田建設は、施工会社でありながら、都市開発事業にも取り組んでいる。今回はその一つである「京橋一丁目東地区」について紹介する。「京橋一丁目東地区」は、同社ともう1社が協同で進める、東京都都市再生特別地区を活用した2街区一体の大規模開発案件だ。具体的にはA街区とB街区に建つ高層ビルを中心に、街区再編による歩行者空間の拡充、帰宅困難者支援等による防災対応力強化、自然エネルギーの活用による環境負荷低減の取り組みなどを実施。このエリアを新しい街「京橋彩区」と名付け、「まちに開かれた芸術・文化の拠点形成」を目指している。A街区のビルは19年に竣工(同社が施工)、現在はB街区の「(仮)新TODAビル計画」が進行中。約60年にわたって使われた戸田建設の旧本社ビルは解体され、21年8月新築着工した。竣工は24年秋の予定だ。これほど大きな事業規模でありながら、京橋プロジェクト推進部のメンバーはたったの10人だ。大半は経験豊かなベテランだが、18年9月、そこに入社1年半の新人が加わった。神山亮平さんは当時をこう振り返る。「本社建て替えは百年に一度あるかないか。大規模な複合用途の超高層賃貸ビルの開発も当社初の試みです。プロジェクトに参加できることを誇りに思いました」未知への挑戦 すべては新たな街のために神山さんに与えられた役割は、全体のスケジュールを管理しつつ、設計・施工・運用の各段階で社内外の関係者との調整を図ること。責任ある仕事を一任されている一方で、検討しなければならない項目は多岐にわたり、交渉する相手も想像以上に多い。「例えばオフィステナント専用のカフェテリア企画。運営事業者候補へのヒアリングと絞り込み、コンペ立案、書類審査と試食審査、社内合意形成、契約締結など、やるべき仕事は数え切れないほどありました。当時の課題は前例のない業務が多かったこと。自ら行動し、時には上司に相談したり、社外コンサルタントを活用することで乗り越えました。おかげでやり遂げる力と人脈を得ることができました」TODAビルのエントランスは、現代アートやものづくりの展示スペースとして機能する計画があり、多くの人が芸術に触れられる工夫がなされている。この企画を担当しているのが、19年に入社し、20年4月に京橋プロジェクトへ配属された竹下佳奈さんだ。竹下さんは就職活動時から、このプロジェクトに強い関心を持っていたという。「芸術文化を都市に欠かせないインフラの一つとして捉えた特区提案は、珍しいアプローチだと思いました。今の私の役割は、戸田建設として初の試みである文化事業の計画を実現させること。数十年後に京橋にいる人たちが、この場所にTODAビルという芸術文化の拠点があってよかったと思えるような、持続可能性を備えた取り組みを検討しています」先述のエントランスでは、高さ約15メートルにもおよぶ天井からアート作品を展示できるよう、吊りバトンの設置を提案。ほかにもパブリックアートの展示を前提に床面の強度検証を依頼するなど、様々な働きかけを行っている。地域に貢献できるユニークな取り組みも行った。京橋・日本橋には老舗の古美術商から現代アートのギャラリーまで数多くあるが、知名度はそれほど高くない。そこで、このエリアの魅力を親しみやすい形でPRすることを考えた。「周辺地域への挨拶をかねて100軒以上の古美術商やギャラリーを訪問し、イラストと写真を多用した『骨董通りマップ』を作成しました。地図が出来上がったときは街のことがよく見えてきましたし、プロジェクトに対する愛着も一段と強くなりました。とても得がたい経験だったと思います」2年後の竣工を目指して 一歩一歩前進していきたい若い2人にとって、このプロジェクトは学びの宝庫。仕事のやりがいについて質問すると、神山さんはこう答えてくれた。「毎日、決めていかなければならない設計仕様・運用管理面の内容をクリアし、一歩一歩前進していく。その先に大きな成果を得られるのがビル開発の醍醐味だと思います。そこは入社1年目で経験した施工管理と似ていますね。今後は24年の竣工に向けて着実に進んでいくことが大切。同時にプロジェクトで得た学びを会社にフィードバックしていくつもりです」竹下さんも、「入社前は想像もしていなかった様々な業務に携わることができ、設計や施工はもちろん、アート関連の方々とお話しする機会も多く、学びとやりがいのある日々です。文化事業は竣工してからが本当のスタート。ビルがグランドオープンを迎え、良いスタートをきれるよう着実に準備を進めていきたいと思います」と意気込みを語る。かつてないほどの大型プロジェクトで豊かな経験を積んでいる神山さんと竹下さん。24年の竣工時、彼らはさらに大きな成長を遂げているに違いない。京橋プロジェクト推進部のお2人戦略事業推進室 国内投資開発事業部京橋プロジェクト推進部PROFILE推進課神山亮平さん(左)(投資開発/2017年/工学部建設学科)コミュニケーションデザイン課竹下佳奈さん(右)(投資開発/2019年/理工学部建築学科)本社所在地:東京都戸田建設株式会社CHECK THE NAVI詳しい情報は37
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