企業研究&インターンシップ完全ガイド 建築・土木系学生版2024
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左/技術者を育成し、パートナーとして技術者の地元の工事を任せられるように全国展開も視野に。右/半数が20代から35歳までの社員で構成されており、若い社員が多く活躍している。保全の重要性を予見し設立 社会的にも注目を集める保全工学研究所として社名にも掲げられている﹁保全﹂事業。実際にそれはどういった仕事なのか。意味するところについて、代表取締役の天野さんは分かりやすく紹介してくれた。﹁保全の仕事は構造物の医師ともいえるものです。現存する構造物の健康診断を行い、不具合があれば精密検査や治療、時には手術を検討します。構造物の真の声を聞き、健康を取り戻すことで、それを利用する人々の安全を守る仕事なのです﹂同社が設立されたのは2005年。1999年に起きたトンネル剥落をきっかけに、土木・建築構造物の老朽化にともなう保全に対する気運が高まっていたことから、将来的に保全が社会にとって欠かせないものになると予見して設立された。2013年には国土交通省がメンテナンス元年として、道路・港湾・ダム・河川・トンネルなど、さまざまな社会インフラの維持管理に取り組むことを提言。保全の重要性が予見どおり、社会的にも注目されるようになる。﹁当社が保全業務で扱う土木・建築構造物は、これまで耐用年数が50年くらいだと言われていました。しかし現在は、都市の高度化により、スクラップ&ビルドよりも、可能な限り活用していこうという意識に変わってきています。アメリカやヨーロッパでは、土木・建築構造物を100年を超えて使い続けます。日本も今後はそれが当たり前となっていくでしょう。保全は今後、ますます大きな意義を持つことになります﹂社会的に保全が注目を集めている状況ではあるが、現状、実際に保全や維持管理に特化した企業は多くなく、同社は貴重な存在だ。デジタル技術を活用 産官学連携も天野さんいわく、現状、社会インフラの保全は技術者の目や耳など五感に頼った手法が主なのだそう。当然、それでは経験や知識といった個人差が出てしまい、精度を保った保全評価が難しくなってしまう。評価を一定に保つために、同社はソフトウエア・ハードウエアを活用した画像診断やドローンによる調査など、業界に先んじるべくデジタル技術を生かした保全にも積極的に取り組んでいる。﹁今後はビッグデータを活用した保全支援ツールなども登場するのではないでしょうか。当社では5年後、10年後を見据えた技術活用のため、産官学連携にも力を入れ、研究活動にも取り組んでいます。一例では都内にある大学のワーキンググループに参加しており、社員が研究領域で知見を身につける機会も提供しています﹂同社では東京都の仕事を多く請け負っている。橋梁・トンネル・港湾河川・公共建築物など保全の対象は多岐にわたっており、今後も安定した市場で着実に成長を見込んでいる。まだまだ伸びしろのある市場に必要なのは、人=技術者。保全や維持管理に特化した企業として、これからも同社ならではの高度な技術を提供していくために、技術者育成にも力を入れていく。﹁専門性が高いので難しさを感じてしまうかもしれませんが、当社では育成をサポートしていきますし、実際に入社時には知識のなかった社員も、今ではさまざまな案件で活躍中です﹂同社では技術士や一級建築士といった資格取得もバックアップしている。天野さんには﹁保全﹂を世界共通語として広めたいという想いがある。そのためにも同社の事業を拡大、成長していく技術者が求められている。「当社の社員は技術力を提供するパートナーという位置づけとして考えています」と話す天野さん。業務でスキルを磨き、一級建築士や技術士といった資格を取得して、専門家として卓越した技術者となることで、自身が裁量を持って働きながら、会社と対等の目線で事業を成長へと導いていく。そんなパートナーの育成に注力する。パートナーとなる社員を育てていきたいPOINT IN CHECK本社所在地:東京都株式会社保全工学研究所CHECK THE NAVI詳しい情報は49

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