企業研究&インターンシップ完全ガイド 建築・土木系学生版2024
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点検・診断業務を通じて 東京の交通を支えたい兼子さんが道路保全の業界を目指すことになった直接のきっかけは、2012年に発生しニュースとなった、大規模なトンネルの天井板崩落事故だった。「土木を学んでいた私にとっては衝撃的な出来事でした。業界としての考え方が、造ることから守ることに変わる分岐点だと思ったのです。そこから高速道路、なかでも普段から自分が使用している首都高速道路を守りたい気持ちが強くなり、入社を決めました。既存構造物の点検・維持管理業務が法令化されたため、仕事の需要が高まることも後押しになりましたね」兼子さんは入社から7年間にわたり、首都高の点検業務を行う構造管理部に所属。東京東地区と神奈川地区の2部署でさまざまな経験を積んできた。単独でできることは少ない 転機となった神奈川時代点検には道路上や高架下から目視する「日常点検」、5年に1回の「定期点検」、災害時や事故時に行われる「臨時点検」の3種類がある。兼子さんが主に担当してきたのは、日常点検と定期点検。首都高の約8割を占める高架道路の下に入り、双眼鏡で遠望目視する点検だ。「構造物の概要把握はもちろん、第三者の被害を防止するため、鳥の巣やコンクリートの破片など落下しそうなものがないかを念入りに調べます。より細かな調査が必要な定期点検は夜間に通行止等を実施し、複数名で高所作業車や橋梁点検車も使用して行うので、さらに規模が大きくなります」東京時代に橋梁点検を担当した際は、学生時代に学んでいない分野を一から勉強し奮闘。ケーブルの張力測定などを行った。トンネル、高架道路、橋梁などあらゆる構造物の点検を経験した兼子さんは、仕事をするうえで必要なのはコミュニケーション能力だと考えている。「どの点検業務も多様な部署、関連業者さんの協力がなければ遂行できません。人の話を聞き、自分の意見を伝える意思疎通は何よりも大切です。それを実感したのが神奈川時代。入社して初めて、自分が新入社員や関係スタッフに指示を出す立場になったのです。課全体の運営方針にも関わったので、この時の経験が成長のきっかけになりました」自ら開発したシステムを 点検の現場に実践導入高架下の目視点検を長く続けていた兼子さんは、現場での作業効率に課題があることに気付いていた。点検員は、損傷があればその場で紙の報告書に一つひとつ記入し、帰社後に報告書としてまとめていたのだ。「点検員が減っても対応できるよう、仕事の効率を高める必要がありました。そこで、私がリーダーになってチームをつくり、タブレットを用いた『点検結果報告書作成システム』を開発。今年の4月から日常点検の現場に実践導入しています。特徴は、単語を音声入力できること。アプリケーション開発には4年かかりました。まだ基本的な入力しかできないの多くの仲間に囲まれ、多彩な経験を積むことで道路保全のプロフェッショナルになった兼子さん。今後は首都高速道路以外の土木構造物も手掛け、安全・安心を守れる技術者になることが目標だ。で、今後はより複雑な状況を入力できるよう進化させていく予定です」現場と開発の経験を生かし 新人教育・管理系業務にも挑戦そして今年、8年目に入った兼子さんに新たな転機が訪れた。内定者や新入社員のフォローを行う企画部企画課と、社内の技術者をサポートし、特許等を管理する技術開発室を兼務することになったのだ。点検業務の比重は大きいが、首都高技術の特徴は仕事の幅が広いことにある。異なる業務を兼任する社員は少なくない。「新入社員を育成するうえでも、点検作業の現場経験やアプリケーション開発の経験は、きっと役に立つと思っています。企画部は会社全体を総括する筆頭部署ですから、例えば災害時のマニュアル作成なども担当します。仕事の幅は今まで以上に広くなると思いますね。勉強は必要ですが、私は未知の仕事に挑戦できること自体がうれしい。今は新人のような気持ちで期待に胸を膨らませています」本社所在地:東京都首都高技術株式会社CHECK THE NAVI詳しい情報は81

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