マイナビ看護学生 就活BOOK2024
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しばらく休みの期間を取ってから、自分らしい働き方ができる職場へ転職していきました。かつては3Kなどと称され、離職率が高いイメージが強かった看護師の仕事ですが、近年では過度な自己犠牲で消耗するのではなく、長く活躍し続けるという視点でのキャリアデザインが注目されつつあります。実際のデータでも、正規雇用看護職員の離職率は10%前後で推移しており、他の職業と比べて特段に高いわけではありません(図)。特に新卒看護師については「離職率目標」を掲げて徹底的にフォローする病院も多く、入職1年目のリアリティーショック軽減に努めています。コロナ禍においていっそう配慮を手厚くけ」が重要だと考えています。「失敗に向き合う経験」は、日ごろの学生生活でも意識しやすいポイントです。授業のグループディスカッションや試験、実習などで思うようにならないことがあったとき、「たまたまうまくいかなかっただけ」と目を背けたり、「単位が取れればいいや」と投げやりになったりしたことはありませんか。実は、こうした小さな挫折こそ、困難を乗り越える力を養う大きなチャンス。勇気を出して、自分の不得意なことにも正面から取り組んでみてください。実習などでは担当の先生からフィードバックをもらえるはずですから、それを前向きに生かしたいですね。社会に出れば毎日が想定外の連続です。人命に関わる医療従事者であればなおさらでしょう。どんなときでも自分で自分を「鼓舞激励」しながら前進し続ける力が、必ず役立ちます。「仕事への動機づけ」は、自分がめざす看護師像を明確にしたり、なぜ看護師になりたいかを言語化したりすることを指します。就職活動においても重要なテーマですが、この点をはっきりとさせておくことで、入職後「自分は看護師に向いていないかも」と迷いが生じたときにも気持するケースも増えているようです。「困難を乗り越える力」を学生のうちから磨いておこう一方で、「先輩の指導が厳しくつらい」「失敗が続いて落ち込み職場に行けない」「体力的についていけない」といった理由で早期退職する看護師がいるのも、また事実です。あこがれの看護師になっても、すぐに先輩のような仕事ぶりを発揮できるわけはなく、入職後のギャップに落ち込む人は少なくないでしょう。こうした苦しいときにも自分を鼓舞し、気持ちを奮い立たせて看護の仕事を続けるためには、どんな力が必要なのでしょうか。私は、「失敗に向き合う経験」と「仕事への動機づちを整理しやすくなるでしょう。本来であれば、もともと抱いていた「理想の看護師」のイメージを、実習などを通して調整したり、具体化したりするのが基本です。しかし、コロナ禍で実習を経験できなかった学生さんも多いはず。そこで助けになるのが、学校の先生やOB/OGの存在です。看護師を養成する学校には、病院の公式サイトやパンフレットからだけでは分からない部分も含めた、職場の詳しい情報が蓄積されているもの。しかも、先生方や卒業生はほとんどが看護師であり、それぞれの領域のプロフェッショナルです。いつも授業を担当している先生が意外な分野の第一人者だった……というケースもあります。ぜひ身近な専門家として相談に乗ってもらってください。 「困難を乗り越える」というと特別なことのように聞こえがちですが、これまでの人生でも少なからずそうした経験があったはず。忘れてしまっていることも意外に多いため、あえて「思い出す時間」を設けることが大切です。お勧めしたいのが、時系列に沿って振り返りを行うこと(表1)。勉強や部活、人間関係などでどんな困難があったか、それをどのように乗り越えてきたか書き出すことが、深い自己理解と自信につながるはずです。医療界の変化を踏まえた病院選びのポイントとは?ここで一度、看護の世界を俯瞰してみましょう。看護師はさまざまな領域で活躍するようになり、国民も大きな期待を寄せています。医療の高度化や機械化、IT化が進む今、そこで貢献できる人材の育成は急務といわれています。また、病気や治療法についてインターネットで簡単に調べられることから、患者さんの治療に対する考え方も多様化しつつあり、患者本位の医療が従来以上に求められるようになりました。目まぐるしく変化する医療技術について勉強を継続し、患者さんにも適切に情報提供できる看護師であるために、「卒業後も成長を続けられる環境」を選ぶことが肝心です。加速する超高齢社会にどう対応していくかという、日本ならではの課題もあります。医療従事者の負担が大きくなることは間違いなく、特に病院で提供できる医療には限界が出てくるでしょう。こうした背景から国が推進している地域包括ケアは、看護師の力がさらに必要になるであろう分野です。病院としてどう地域連携を図っているか、そこで看護師がどんな役割を担っているかも、ぜひ注目しておきましょう。さらに、2024年には医師の時間外労働の上限規制が適用され、いわゆる「医師の働き方改革」が本格困難を乗り越えるには、「失敗に向き合う経験」と「仕事への動機づけ」が必要図正規雇用看護職員・新卒看護職員・既卒看護職員の離職率の推移※日本看護協会:「2021 年病院看護実態調査」より日本の主要産業の離職率は、パートタイムを除く一般労働者で11.1%(厚生労働省「2021年(令和3年)雇用動向調査」)。正規雇用の看護職員と同程度であり、新卒看護師の離職率はさらに低いことが分かる。(年度)2520101550(%)2011201820202017201420192021新卒    正規雇用    既卒29

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