日本のリーディングカンパニー2025
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452住友林業が株式会社として現在の形態になったのは1948(昭和23)年のこと。しかし、創業という意味では今から330年以上前の1691(元禄(げんろく)4)年にまでさかのぼる。住友家が開いた四国の別子銅山周辺の立木利用から事業が始まったのだという。歴史ある企業が名を連ねる住友グループの中でも、創業が最も古い企業の一つということからも、いかに住友林業の名が“重い”のかがうかがえる。森林から木を切りだし、それを販売する「山林事業」を創業以来続けていた住友林業であったが、大きな転機が訪れたのは明治期にさしかかってから。鉱山業の近代化に伴い、別子銅山周辺の木々は燃料確保を目的に大量に伐採されてしまった。その上、銅の精錬で発生する亜硫酸ガスの影響で、周辺の山々は岩肌が見えるまでに荒廃してしまう。別子銅山の2代目支配人・伊庭貞剛は、そんなありさまを目の当たりにして、「自然の恵みである銅を事業としている企業が、自然の恵みである森を荒廃させてはならない」と、大規模な植林を開始した。伊庭は別子の山に多いときで年間約250万本ものスギやヒノキを植林。見事に森林を再生させる。今でこそ環境保護が声高に叫ばれているが、約130年前に産業化の行き過ぎを自省し、持続可能な環境社会づくりに貢献しようとした志は、木のスペシャリストたる住友林業の経営理念に受け継がれている。この「山林事業」は今では「資源環境事業」と名を変え、現在でも、森林を管理保有しながら、木を植え、育て、伐って活用し、再び植えるという持続可能な森林経営を展開している。以後しばらくの間は山林事業のみをなりわいとしてきたが、約70年前に新しい試みにチャレンジすることになる。「木材建材事業」として、木材・建材の商社機能をスタートさせたのだ。戦後社会から脱却し高度経済成長期に入り、木材の安定的な量・質・価格の確保が求められるなかで、国内外のネットワークを駆使し、木材・建材の輸入販売を手掛けることで、その需要に応えていったのである。そして、約50年前には、今では住友林業の代名詞となった住宅事業が開始される。画一的な住宅しか建てられていなかった時代に、お客様の多様なニーズに応えながら、良質な木材を使い、健康で安心・安全な住まいを提案することで、人口増に伴う日本の住宅需要上昇に応えていったのである。現在、木材建材事業と住宅事業は、同社のコア事業となっている。このように住友林業は一つの事業だけに特化することなく、時代のニーズに合わせて柔軟に形を変えてきた。そして、何よりもこれらの事業が全て有機的につながっている点こそが、住友林業の最大の強みである。木を植え、育て、流通させ、家を造り、植え、また育てる︱。“木”に関わる一連の流れを一貫してまかなえる企業は、世界中を見渡しても珍しい存在である。トータルに事業を進めていけるだけ創業は江戸時代初期木と共に歩んだ330年木の全てに関わる住友林業環境保護への貢献にも積極的日本のリーディングカンパニー住友林業木の可能性を引き出すサステナブルなビジネスモデル顧客の細かなオーダーを取り入れ、高品質な住宅が造られる。メーカー/住宅/株式公開住友林業が株式会社として現在の形態になったのは1948(昭和23)年のこと。しかし、創業という意味では今から330年以上前の1691(元禄(げんろく)4)年にまでさかのぼる。住友家が開いた四国の別子銅山周辺の立木利用から事業が始まったのだという。歴史ある企業が名を連ねる住友グループの中でも、創業が最も古い企業の一つということからも、いかに住友林業の名が“重い”のかがうかがえる。森林から木を切りだし、それを販売する「山林事業」を創業以来続けていた住友林業であったが、大きな転機が訪れたのは明治期にさしかかってから。鉱山業の近代化に伴い、別子銅山周辺の木々は燃料確保を目的に大量に伐採されてしまった。その上、銅の精錬で発生する亜硫酸ガスの影響で、周辺の山々は岩肌が見えるまでに荒廃してしまう。別子銅山の2代目支配人・伊庭貞剛は、そんなありさまを目の当たりにして、「自然の恵みである銅を事業としている企業が、自然の恵みである森を荒廃させてはならない」と、大規模な植林を開始した。伊庭は別子の山に多いときで年間約250万本ものスギやヒノキを植林。見事に森林を再生させる。今でこそ環境保護が声高に叫ばれているが、約130年前に産業化の行き過ぎを自省し、持続可能な環境社会づくりに貢献しようとした志は、木のスペシャリストたる住友林業の経営理念に受け継がれている。この「山林事業」は今では「資源環境事業」と名を変え、現在でも、森林を管理保有しながら、木を植え、育て、伐って活用し、再び植えるという持続可能な森林経営を展開している。以後しばらくの間は山林事業のみをなりわいとしてきたが、約70年前に新しい試みにチャレンジすることになる。「木材建材事業」として、木材・建材の商社機能をスタートさせたのだ。戦後社会から脱却し高度経済成長期に入り、木材の安定的な量・質・価格の確保が求められるなかで、国内外のネットワークを駆使し、木材・建材の輸入販売を手掛けることで、その需要に応えていったのである。そして、約50年前には、今では住友林業の代名詞となった住宅事業が開始される。画一的な住宅しか建てられていなかった時代に、お客様の多様なニーズに応えながら、良質な木材を使い、健康で安心・安全な住まいを提案することで、人口増に伴う日本の住宅需要上昇に応えていったのである。現在、木材建材事業と住宅事業は、同社のコア事業となっている。このように住友林業は一つの事業だけに特化することなく、時代のニーズに合わせて柔軟に形を変えてきた。そして、何よりもこれらの事業が全て有機的につながっている点こそが、住友林業の最大の強みである。木を植え、育て、流通させ、家を造り、植え、また育てる︱。“木”に関わる一連の流れを一貫してまかなえる企業は、世界中を見渡しても珍しい存在である。トータルに事業を進めていけるだけ創業は江戸時代初期木と共に歩んだ330年木の全てに関わる住友林業環境保護への貢献にも積極的顧客の細かなオーダーを取り入れ、高品質な住宅が造られる。

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