超高層ビルの建設を手がけるゼネコンの一つ、戸田建設。その高い技術力と存在感は都心の超高層ビルにおいてこそ遺憾なく発揮されるが、同社はそのスキルをもって都市開発事業にも積極的に取り組んでいる。その一つが、京橋プロジェクトだ。これは、2019年に竣工したミュージアムタワー京橋(同社が施工)と、2024年9月に竣工した「TODA BUILDING」とで構成される一都市計画二事業の大規模開発プロジェクトで、このエリアを「京橋彩区」と名づけ、「まちに開かれた、芸術・文化拠点の形成」を目指している。このTODA BUILDINGは、オフィス・商業施設・美術館を擁する超高層複合用途ビルで、最大の特色は「コアウォール免震構造」を採用し、国内でも高い耐震グレードを実現している点。さらにエントランスロビーを開放し、災害時の避難場所とするほか社会活動を継続できるレベルの耐震性能も創り上げている。このコアウォールの施工管理を担当したのが、中川皓介さんだ。「入社以来、オフィスビルや教育施設などを担当してきましたが、これだけの大規模プロジェクトは初めての経験。そのスケール感高レベルの耐震構造の根幹コアウォールの施工を担うと、ものづくりのダイナミックさを実感できることにモチベーションが高まりましたし、何より、耐震性能の根幹であるコアウォールを担当することに身が引き締まりました」と、当時を振り返る。中川さんは、コアウォールの施工検討と、プレキャストコンクリートの納まり検討などの準備段階から参加したが、この施工検討と施工が最も苦労したという。「施工検討に2年、施工に1年を費やしました。コアウォールは五重塔の心柱のように、建物の中央に配置した連層耐震壁のことで、これが心棒となり、上層階まで揺れと変形を低減させます。地上の壁は通常15~20センチなのですが、約165メートルもある建物の地震力をすべて受けもつために必要な壁の厚さは1・3メートル。使用する鉄筋もD 41(直径41ミリ)という普段使わないような太さと重さで、その鉄筋の位置保持や免震性・耐震性を高めるために施工難度が高い形状の拘束筋が設計図にて採用されていました。また、足場も特殊な自走式足場を使うなど、当社においてもその多くが初めての試みでしたね」したがって、超高層ゆえの難しい条件下で、仮設計画や使用する重機の種類、地上での鉄筋の組み方や施工方法など細部に至るまで詳細に検討。さらに、実物大のスケールで鉄筋を組み、施工法を確認する先行施工試験を行ったところ、2回で成功したという。「1回目で判明した諸課題をどうブラッシュアップしていくか再検討し、2回実験できたことは非常に良い経験でした」コアウォールの施工終了後は低層階の吹抜内装を担当し、「低層階は芸術文化エリアと呼ばれる所で、吹抜部分は図面上では表現されにくい箇所や、納まりが難しい部分が多くありました。それだけに、職長、作業員さんとの打合せを密にしながら、吹抜部分の足場解体という工程上のクリティカルパスをずらすことなく進めることができ、大きな達成感を味わうことができました」と語る。このような大規模プロジェクトでは、日々さまざまな課題に直面することも少なくない。「高難度のコアウォールの施工を完了させられたのは、チームワークのおかげです。課題発覚時は全員が一度作業を止めて集まり、みんなが納得して作業を再開できるようにしていました。施工検討の段階から、普段関わることのない部署の方々や職長、作業員さんの経験や意見を交えて問題解決していったのも新鮮でしたね」このプロジェクトを通して大切にしていたこと、仕事の醍醐味に建築とは人間が生きていく安全な環境を創造することついて尋ねると「いずれ来るとされている首都直下型地震にも耐え得る品質にするべく、施工精度確認や検査などを密に行いました。実は、現場の27階で震度5の地震に遭遇したことがあるのですが、全く揺れを感じなかったのです。その時はコアウォールの性能を実感できて本当に嬉しかった。また、工程が厳しい部分もあったため、職長、作業員さんに元気で余裕をもって仕事をしてもらえるよう、段取りはもちろん、明るい雰囲気づくりを心がけていました。そして、これからオフィスを利用する人、地域で社会活動を行う人々に、災害時でも『TODA BUI LDINGなら大丈夫だ』という安心感を提供できるよう、日々の業務に取り組んでいました」と語る。ますますの活躍が期待されている中川さんだが、今後の目標について次のように語ってくれた。「当社では、大小さまざまな施工規模の現場に関わることができます。関係部署とのコミュニケーションも取りやすく、課題解決に向けた創意工夫や提案を尊重し、チャレンジさせてくれる土壌もあります。このプロジェクトで得た社内外のつながりを大切に生かしながらマネジメント力を養い、経験値を高めて、司令塔として現場を引っ張ることができる存在になりたいですね」中川 皓介さん東京支店建築工事3部工事1室PROFILE2017年入社。工学部建築工学科卒業。「竣工するとコアウォールの部分は隠れてしまいますが、関わった仕事が形となって現れ、半永久的に存在し、社会に貢献できる誇りある仕事だと思っています」とやりがいを語る。本社所在地:東京都戸田建設株式会社CHECK THE NAVI詳しい情報は37
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