企業研究&就活準備ガイド 建築・土木系学生版2026
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 富田さんは高校時代、地元で起きたトンネル天井板崩落事故の報道に衝撃を受けた。土木を学ぶきっかけにもなったと振り返る。「インフラの維持管理がどれほど重要なのかを突き付けられ、それ以来、自分もその一助になりたいという思いが膨らんでいきました。土木について広く学んだ大学時代には、高齢化が進む日本の道路インフラの現状に触れ、ますます思いを強くしました。なかでも首都高速道路は首都圏の各地をつなぐ重要なネットワーク。技術者としてその安全を支え、貢献したいと思い、入社を決めました」 入社後は首都高を支える高架橋の点検に従事。橋の橋脚や支承、橋桁などに接近し、打音検査や触診検査によって損傷や異常がないかを細かく確認していった。「点検業務を通して学んだのは“なぜ?”を突き詰めることの重要性です。損傷が起きた原因まで検証・報告することが私たちの役割であり、その一つひとつが補修計画に反映されるからです。責任の重さとともに、インフラを守り抜くやりがいを感じる日々でした」点検を効率化する技術も開発幅広く挑戦できるフィールド 入社3年目には、点検業務と並行して技術開発にも携わった。点検現場では接近が困難な状況も珍しくない。富田さんはその経験から「全方位カメラを活用すれば困難な点検も効率よくできる」と提案。共に点検業務を行うメンバーと協力しながら、技術開発を行った。「釣り竿をヒントに、カメラを自在に吊り下げられる治具があれば、橋桁の裏側や橋脚の内部も360度撮影でき、点検の漏れをなくせると考えました。上司・同僚からも意見をもらいながら開発を進め、数カ月で実用化を実現。現場目線を活かして技術開発にも貢献できたことに自信を深め、挑戦への意識がいっそう強くなりました」 入社6年目の現在は、企画部で業務に取り組む。「首都高の維持管理に貢献できるよう、自らの技術力を高めていくと同時に、社員の成長をサポートし、頼りがいのある先輩をめざします」 一方、建築分野を担当する白井さんは、首都高のパーキングエリア(PA)や料金所、営業所、倉庫など、首都高に関連する建築物点検、設計、積算へ経験がつながっていく感覚の点検や設計・積算業務に携わる。「大学時代は建築について幅広く学び、町づくりにも領域を広げていきました。そのなかで興味を抱いたのが、多くの人たちの生活に欠かすことのできない交通インフラだったのです。今後は既存の建物をいかに後世に受け継ぐかが重要になると考え、首都圏の大動脈を守る当社に興味を抱きました」 入社後4年間は建築物の点検、5年目から設計・積算業務や技術開発に携わる。6年目には建築点検アプリケーションの開発にも携わり、7年目の現在は首都高のみならず、社会インフラサポート事業と呼ばれる国や自治体等からの業務まで幅広く対応している。自身のキャリアを振り返る白井さんは、「経験を重ねるごとに、点と点がつながる感覚があります」と表現した。「点検業務を担当したとき、あるPAの階段に異常を発見し、報告をあげたことがありました。その後、異動して設計・積算業務に携わり自らその補修設計を担当することになったのです。点検から補修へ確実につながることを実感し、工事完了後には、全ての業務が多くのお客様の安全に結びつくことを改めて胸に刻みました」。点検で建物の状況を隅々まで見た経験が補修設計に生き、点検現場の効率化に寄与するアプリケーションの開発にもつながった。設計を経験することで、積算に関する理解も深まったという。 そんな白井さんの仕事のモットーは、「背伸びをしないこと」。「自分を過信せず、謙虚に学び続けるという意味です。社内外の様々な関係先との連携が欠かせないので、不明点があればごまかさず確認することが大事。その面でも謙虚さを意識しています。そして、自分の技術力をもっと向上させる必要があります」と、自身の課題にも触れた白井さん。その表情から、謙虚に自分を磨き、社会貢献に挑む決意が伝わってきた。本社所在地:東京都首都高技術株式会社CHECK THE NAVI詳しい情報は77

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