薬学生のためのインターンシップ&キャリアガイド 夏号2026
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 国内の病院数は1990年に1万件を超えてピークに達して以降、減少に転じている一方で、無床の診療所は増加傾向にある。膨張し続ける国民医療費に歯止めをかけるための病床数抑制、入院期間短縮、地域医療への移行などが影響していると考えられる。2025年問題が目前に迫る今、従来の医療のあり方では立ち行かなくなっていることは確かだが、新しいあり方への転換は良くも悪くも診療報酬改定による強力な誘導でなされる。2年に1回行われる改定の中身を注視しておこう。 地域包括ケアシステムでは、「病院完結型医療」から「地域完結型医療」への転換が求められる。医療機関が持つ機能を整理して、患者の状態に応じた適切な医療を提供できる体制を敷くとともに、できるだけ早期に患者を在宅へ移し、必要に応じて訪問診療・看護や介護サービスにつなげるという仕組みを作り上げる必要がある。こうした流れのなかで急性期医療のニーズが低下し、医療機関は一般病床から地域包括ケア病床への転換を進めるなど対応に追われている。病院も診療所も医療の「核」となる存在であることには変わりないものの、地域包括ケアシステムのなかで他施設と連携しながら歩んでいく意識が強く求められるようになることを覚えておこう。 病院の薬剤師は、他の医療スタッフと緊密に連携しながら、チーム医療の一員として活動することになる。薬学の進歩を受けて新薬が次々と臨床に供され、それに伴って薬物療法が高度化・複雑化しているため、薬剤師が医師と並んで治療に関与する姿も珍しくなくなった。従来、薬剤師は病院のなかで存在感が薄いといわれることもあったが、他職種とコミュニケーションを図りながら自身の専門性を生かしていく必要がある。 かつて病院薬剤師の業務は、院内薬局(調剤所)での調剤業務がメインだった。しかし、薬剤師の高度な専門性をベッドサイドで生かしたいとのニーズが高まるようになり、病棟での勤務をメインとする薬剤師(病棟薬剤師)も登場してきた。診療報酬による誘導もあり、病棟薬剤師が活躍する姿は一般化していくだろう。病院・診療所一口に病院・診療所と言っても、その規模やタイプはさまざま。病院や診療所は医療の「核」となる存在だが、求められる役割は時代とともに変わりつつある。業界研究1GYOKAI KENKYU HOSPITAL · CLINIC「病院完結型医療」から「地域完結型医療」へ業界のこれからFUTUREベッドサイド業務が当たり前の時代に働き方WORK病院数は減少の一途無床診療所は増加傾向業界の今NOW個人持ちの一冊を携帯して、気になることがあればサッとチェック。アプリ版や、自作の一覧表・略語集を活用する人も。患者さんから医師や看護師と誤解されないよう、ベッドサイドなどであいさつするときは「薬剤師の」を強調することが習い性に。医療提供の主要な拠点である病院で、安全かつ効果的な薬物療法を実現。エビデンスに基づいた処方提案にも積極的に取り組む。薬学の知識を駆使して治療の一翼を担いたい価値観院内薬局で調剤業務に向き合うまじめさに加えて、他職種や患者さんなど、他者と前向きに対話する姿勢を備えている。素早く正確な仕事ができ対話にも前向きなタイプ素質「薬剤のプロ」として知識や技術をアップデート。特定分野のスペシャリストをめざし、認定・専門薬剤師資格の取得を考える人も。日進月歩の臨床薬学をたゆまず学び続ける知識チーム医療のなかで活動するため、相手のニーズをくみ取りつつ自身の意見も的確に伝える、真のコミュニケーション能力が培われる。薬剤師以外の職種との連携もお手のものスキル院内薬局はもちろん、病棟のベッドサイドや薬剤師外来など幅広い現場で、薬学の専門性を生かしたいと考えている。「目の前の患者さん」に貢献できるよう奮闘モチベーション具体的な時間や人数配置、忙しさなどは病院ごとに異なるものの、夜勤や当直など体力が必要となる場面も少なくない。夜勤や当直もこなし「医療従事者の体」に体力必須アイテム定番フレーズ体薬剤のリファレンスブック「薬剤師の○○です!」心技54 国内の病院数は1990年に1万件を超えてピークに達して以降、減少に転じている一方で、無床の診療所は増加傾向にある。膨張し続ける国民医療費に歯止めをかけるための病床数抑制、入院期間短縮、地域医療への移行などが影響していると考えられる。2025年問題が目前に迫る今、従来の医療のあり方では立ち行かなくなっていることは確かだが、新しいあり方への転換は良くも悪くも診療報酬改定による強力な誘導でなされる。2年に1回行われる改定の中身を注視しておこう。 地域包括ケアシステムでは、「病院完結型医療」から「地域完結型医療」への転換が求められる。医療機関が持つ機能を整理して、患者の状態に応じた適切な医療を提供できる体制を敷くとともに、できるだけ早期に患者を在宅へ移し、必要に応じて訪問診療・看護や介護サービスにつなげるという仕組みを作り上げる必要がある。こうした流れのなかで急性期医療のニーズが低下し、医療機関は一般病床から地域包括ケア病床への

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