薬学生のためのインターンシップ&キャリアガイド 夏号2027
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 公的医療保険制度では、医療行為の一つひとつに点数(価格)が定められ、診療報酬として医療機関に支払われている。この診療報酬のうち調剤に関わる部分が、調剤報酬と呼ばれるものだ。 調剤報酬改定は、社会情勢などを踏まえながら内容を調整することで、薬局・薬剤師の機能や役割をより良い方向へ誘導するという政策的な側面を持っている。つまり、国が考える「今後の望ましい薬局や薬剤師の姿」が、調剤報酬改定を通して浮き彫りになってくるわけだ。調剤報酬制度は複雑で、すべてを理解しようとするのはなかなか大変だが、改定の大まかな方向性を押さえておくくらいは就活中から意識しておきたい。 まず注目したいのが、評価の比重が対物業務から対人業務へ移りつつある点だ。2015年に厚生労働省が「患者のための薬局ビジョン」を公表して以来、薬剤師業務の比重を対物から対人へシフトさせることの重要性が盛んに叫ばれてきた。調剤業務の機械化が進んでいること、「0402通知」(厚生労働省が2019年に発出)で薬剤師以外のスタッフでも薬の取りそろえなどが可能だと示されたことも、こうした流れを加速させているといえる。 そうした中で、2022年度改定では調剤報酬の体系が大胆に再編され、対物業務を評価する点数が「定額制」となって抑えられる一方、対人業務を評価する点数が手厚くなった。これからの薬局・薬剤師の業務は、安全性を担保しつつ対物業務を効率化した上で、処方内容の薬学的分析、調剤設計、服薬指導といった、より高度な薬学の専門性が問われるものに比重が移っていくと考えられる。実習や就活中から「物を相手に仕事するのではなく、人を相手に仕事する」という意識を持っておきたい。 もう一つの大きなポイントが、地域に貢献してきた実績ある薬局が、より高く評価されるようになった点だ。夜間・休日等の対応、重複投薬・相互作用防止(ポリファーマシー対策)、在宅薬剤管理、かかりつけ薬剤師による指導などについて一定の基準をクリアした薬局は、より高い点数を得られるように改定された。これからの薬局・薬剤師は、特にこうした部分で地域から求められる役割を果たし、しっかりと実績を積み重ねることを意識してい調剤報酬改定から4つの視点で未来を読み解こう!Thinking about the future from four perspectives薬学生の志望度が特に高い業界は、病院と調剤薬局。次いで、ドラッグストアという結果に。調剤報酬改定がどのような意味を持つか、業界によっても違いがあるため、自分の志望先と照らし合わせて考えてみよう。 未来を読み解くヒント 「調剤報酬改定」は 就活中から意識したい 「対物」から「対人」へ 薬剤師に期待する役割を 点数でも明確化 地域貢献の実績や 組織・職種をまたぐ連携が 重視される時代に 33.1%31.8%26.0%23.5%6.9%1.3%8.4%3.2%11.7%4.5%1.3%1.3%7.1%0.6%7.1%3.2%病院薬剤師調剤薬剤師(全国展開ありの調剤薬局)調剤薬剤師(ドラッグストア)調剤薬剤師※1調剤薬剤師※2製薬企業(開発職)公務員CRO※3製薬企業(研究職)製薬企業(MR)化粧品メーカー(研究・開発)SMO(CRC:治験コーディネーター)医薬品卸食品メーカー(研究・開発)その他まだ決まっていない就職活動開始時の第一志望業種・職種は? (複数選択)Q※1 地元密着の調剤薬局/10店舗以上  ※2 地元密着の調剤薬局/9店舗以下※3 CROには、臨床開発モニター、統計解析、薬事、安全保障、信頼性保証などの職種が含まれています。40

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