「対物から対人へ」業務の重心の変化る今だからこそ、新人時代の「修行」が物を言うでしょう。対人業務に力を割くためには薬剤師のタスクシフトが必須 こうした話をすると、現役薬剤師から「対物業務だけでも大忙しなのに、もっと対人業務に力を割くなんて無理です」といった反応をされることがあります。確かにその通りで、単純に薬剤師の仕事を増やし続けるのであれば、破綻は目に見えています。そこで、タスクシフトが重要なのです。薬剤師が担っていた仕事の一部を機械化・ICT化したり、非薬剤師のスタッフに任せたりすることで、対人業務に取りかかるための時間や気力、体力を確保できます。こうしたシステムの導入に積極的な法人かどうかが、薬剤師の業務内容やワークライフバランスを左右することは間違いありません。 非薬剤師スタッフの活用については、2019年4月2日、いわゆる0402通知(調剤業務のあり方について)が厚生労働省から発出されたこともあり、業界内で少しずつ広がってきています。ハザマ薬局でも「薬局パートナー」と呼ばれる調剤事務のスタッフを導入・育成し、薬学的専門性までは必要ないけれども相応に大切な業務を担ってもらっています(P・61写真)。具体的には、薬剤師の指示・管理下におけるピッキングなどの調剤補助、外来受付、契約関係やレセプトのデータ入力、物販などです。薬剤師が患者さんに集中するあまり業務全体を見渡しにくいような場面でも、薬局パートナーが広い視野で目配りしながらサポートしてくれています。こうした支えがあるからこそ薬剤師は存分に患者さんと関わることが可能になるわけで、もはや当社にとって欠かせない存在です。 ベテランの薬局パートナーが新人薬剤師を育てる姿もよく見られるようになりました。店舗全体を見ながら「ここのチェックは今日中にお願いします!」などとタイムマネジメントもこなすさまは頼もしく、ベテラン看護師に支えてもらった自分の研修医時代を思い出します。薬剤師からすればまさに頼れる相棒ですし、薬局パートナーの側も患者さんの経過を共有することで「医療人」としてのやりがいを感じ、互いにリスペクトする気持ちが生まれているようです。「どこも同じ」で思考停止せず志を達成できる場を探そう ここまで、就職先を探す上で重要な視点を解説してきましたが、逆に「やってはいけないこと」もあります。まず、薬学生と話しているとき「最近の薬局/病院は○○らしいですね」という言葉がよく出てくることが気になっています。口コミが参考になることもゼロではありませんが、伝聞だけで重要な物事を判断するのは決して望ましくありません。ましてや、誰が書き込んだかも分からないインターネット上の書き込みを単純に信頼し、将来を左右されていいのでしょうか。「らしい」で終わらせず、一次情報を入手する姿勢を忘れてはなりません。 そして、法人選びにおける最大のNGは、「どこに行っても大差ないだろう」と思考停止することだと思います。調剤薬局や病院、ドラッグストアなどを少しのぞいただけでは、業界ごとに仕事内容が決まりきっているように感じるかもしれません。しかし、実態は職場により大きく異なるので、薬剤師として望むような経験が積めるかどうか、入念にリサーチしてください。間違っても「どこも同じだから待遇の良い順に応募する」なんてことはやめてください。給料や福利厚生の水準は永久不変ではなく、これからの時代どうなるか分かりません。それだけをモチベーションの源泉にするのは運任せと同じです。 薬剤師業界が変革期を迎えた今、組織としてのビジョンがいっそう重大な意味を持つようになりました。ぜひトップ層のメッセージを積極的に知ろうとし、機会があればどんな未来図を描いているのか尋ねてみてください。皆さんが薬剤師をめざした志を振り返り、それを実現できる職場にたどり着けることを願っています。したら「何で薬剤師が?」とけげんな顔をされたり、病棟で患者さんに関わろうとしたら邪魔者扱いされたりするような環境だったら……。もちろん、逆境を打破して道を切り拓いてきた先人もたくさんいますが、その多くは経験豊富で腕に覚えのある薬剤師たち。新卒者には、やや荷が重いのではないでしょうか。 そうした意味でも、新人時代からしっかりと経験を積むためには、「自分の挑戦したいことができる現場があるか」「入社/入職してどのくらいで挑戦できるか」を確認することをお勧めします。例えば、ハザマ薬局では新人薬剤師もできるだけ早期から在宅の現場に出てもらい、医師から「君はどう思う?」と意見を問われる場面も多いため、そうした経験を望む薬学生たちが門をたたいてくれます。 いち早くFAFのスキルを身に付けることは、薬剤師個人のキャリア形成という観点からも大切だと考えています。というのも、結婚や出産を経ると、スキルアップのために使える時間がどうしても減ってしまいがちだからです。FAFのスキルがあるかどうかは、薬剤師として脂が乗った時期に飛躍できるかどうかにも大きく影響するはず。薬剤師に求められることが増えてい従来の薬剤師は、薬剤中心の対物業務が主な仕事だった。しかし、厚生労働省が策定した「患者のための薬局ビジョン」では、専門性やコミュニケーション能力の向上を図り、患者さん中心の対人業務にも力を入れていくべきとされている。対物業務対人業務処方箋受け取り、保管調製薬袋の作成報酬算定薬剤監査、交付在庫管理処方内容チェック(相互作用や重複投薬など)医師への疑義照会丁寧な服薬指導在宅訪問での薬学管理副作用、服薬状況のフィードバック処方提案残薬解消60
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