薬学生のためのインターンシップ&キャリアガイド 夏号2027
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製薬会社(研究・開発)新薬が世に出るまでには多くの工程を経るが、その上流部分を担うのが製薬会社の研究職・開発職。強い志と研究マインドが求められる専門性の高い職種だ。業界研究4 新薬開発に要する期間は長期化する傾向にあり、有望な新薬を開発できるかどうかが製薬会社の浮沈を大きく左右する。しかも、新薬開発に参加するプレイヤーは国内にとどまらず、世界規模での競争になっている。こうした背景もあり、製薬会社は国境を越えたM&A(企業の合併・買収)で研究開発・製造販売の効率化を図ってきた。 製薬会社の研究職が手がける研究の一つは「基礎研究」で、新薬候補となる物質(シーズ)を探し当てるもの。自然界に存在する天然素材から抽出したり、バイオテクノロジーで化学的に合成したりする地道な研究によりシーズは発見されるが、実際に医薬品として結実する確率は1万分の1程度ともいわれる厳しい世界だ。 もう一つは「非臨床研究」で、医薬品として利用できる可能性のある化合物を、さまざまな方法でテストしていくもの。医薬品としての有効性と安全性を立証するため、動物や細菌を用いて試験を行う。さらに、医薬品にする際の品質や安定性に関する試験も必要になるため、非臨床研究のすべてのプロセスを終えるには5年ほどかかるといわれている。 開発職は、患者が待ち望む新薬を世に送り出すまでのすべてをコーディネートする仕事だ。臨床試験(治験)全体のプロセスを把握しながら、どのようにプロジェクトを進めていくかというプランを立案し、進行を管理する。近年では、海外の製薬会社と共同で治験を進める機会も増えてきている。 治験に参加する被験者を守り、新薬候補物質の有効性や副作用を正確に調べる上では、厚生労働省が定めたGCP(医薬品の臨床試験の実施基準)という厳格なルールがある。製薬会社の開発職は、こうしたルールや関連法を遵守しながらプロジェクトを進めていく必要があるため、高い規範意識や倫理観が求められる。 近年では、治験のプロセスの一部をCROへアウトソーシングすることも増え、その場合の開発職はCROとの連携窓口としても機能することになる。また、実際に治験を依頼する医師とも協議を重ね、患者の様子や症例報告などの情報を収集する。関係各所をコーディネートしながらプロジェクトを進めるには膨大なエネルギーが必要とされるが、「自分の手で新薬を世に送り出した」という達成感は何物にも代えがたいだろう。新薬を世に送り出すべくコーディネート/開発職業界の今とこれからDEVELOP自ら発見したシーズが世界を変える/研究職業界の今とこれからRESEARCH研究職として実験に従事するにも、開発職としてプロジェクトを進めるにも、細やかな進行管理が必須。意外とアナログ派も多い。自ら携わって育ててきた仕事が、無事に日の目を見てほしい……。治験で期待した成果が得られるか、寝ても覚めても気になる。必須アイテム定番フレーズスケジュール管理ツール「フェーズ1の結果、どう出るかな……」研究職も開発職も、部署やチームにより業務(領域)が細分化されている。まずは配属された場所で知見を蓄積することが先決だ。配属先で必要な知見をまずは身に付けていく知識成功するとは限らない研究開発に取り組み続ける忍耐力が特徴。医薬品を生み出すにふさわしい規範意識や倫理観も備える。「いつか上市できる」未来を信じて突き進む素質薬剤を「使いこなす」のではなく「新たに生み出す」ことができるのは研究開発職だけであり、そこに大きなやりがいを感じている。薬物治療を根底からアップデートする存在価値観世界中の患者さんに新薬を届け、より効果的な治療やQOLの向上に寄与したいという情熱が仕事の源泉になっている。まだ見ぬ新薬を患者さんの元に届けたいモチベーション創薬は一人でできる仕事ではない。最短ルートでの新薬開発をめざすという意味でも、「仲間と協働する」意識はかなり高い。仲間との意見交換や情報共有で円滑な進行をスキル裁量労働制などを取り入れる企業も増えてきたが、研究や開発の状況に応じて臨機応変な対応が求められることも珍しくない。裁量は大きめの傾向だが進捗によって大変な時も体力体技心GYOKAI KENKYU PHARMACEUTICAL COMPANY77

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