食品・化粧品メーカー業界研究7 食品は、ただ単においしいだけでは十分といえず、安全性が担保されていなければならない。また、近年では特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品に代表されるように、食品の機能性に対する関心が高まっている。健康志向の高い消費者のニーズに応えつつ、海外製品も含めた激しい競争に打ち勝つため、安全性の追求や高付加価値による差別化へ心血が注がれている。市場縮小が続く日本において、比較的堅調に推移している業界の一つといえるだろう。 食品メーカーでは、食品原料や加工品、清涼飲料水やアルコール類などの開発・製造・販売を手がける。当然、いわゆる飲食物が主軸ではあるが、昨今のメーカーでは蓄積された知見や技術を異なる分野で応用している場合が少なくない。例えば、医薬品原料の製造などに関わるケースもあり、意外なかたちで医療に貢献できる可能性もある。製品の安全性や機能性に関わる領域を中心に、薬剤師としての知見が大いに求められる仕事であることは間違いない。担当領域に詳しくなることはもちろん、味付けや栄養素など食全般の知識が豊富になっていくだろう。 日本の化粧品は品質の高さといった点で優れており、国内のみならず海外からも注目を集め続けてきた。その開発に当たっては、新規の有効成分を探したり、成分が人体に与える影響を確認して安全性や機能性を担保したりといったプロセスが欠かせない。また、製品ごとの適切な製造方法を考案したり、薬機法に基づいて正確に各種手続きを進めたりすることも重要だ。こうした部分の担い手として薬剤師のニーズがあり、薬学の専門知識を存分に活用できる。 化粧品メーカーでは、多様な化粧品の開発・製造・販売を行っている。近年では、コストパフォーマンスに優れた低価格帯の製品と、アンチエイジングなどの機能を謳う高価格帯の製品に二極化する傾向が見られる。より安全かつ高品質をめざすことは大前提として、ブランドごとのコンセプトを体現しながら「選ばれる化粧品」を形にしていく仕事だ。ビューティー市場に新たな価値を提案し、美を通した社会貢献を担う――とも言い換えられる。人々の健やかな生活を支えるという意味では、医療と同じゴールをめざす業界とも捉えられるだろう。+αの価値を生み出す食の探究者たちFOOD「美」という観点から人々を元気かつ幸福にCOSMETICSGYOKAI KENKYU FOOD & COSMETICS研究、開発、販売などに関するアイデアがひらめいたら、忘れないうちにメモ。社内外で多くの人と連携するため、スケジュール管理も重要だ。さまざまな世代のニーズを捉えるため、家族や友人に対しても質問しがち。担当分野の新製品が出たときは、もちろん感想を聞く。必須アイテム定番フレーズ手帳&メモ帳「今、どんな○○を買ってる?」担当するジャンルや製品に熱い思いを抱き、周辺情報も常に更新。もちろん、薬学部で学んだ知識が土台となり、多くの場面で役立つ。担当分野の製品知識や業界動向をアップデート知識人体への安全性を第一に考えながらも、日常生活を一層豊かにするような製品作りに携わり、市場のニーズに応える役割を担っている。消費者が求める「よりよい製品」を追求価値観「おいしい上に健康にもよい」「美しい色味で肌にも優しい」など、新規性のある製品を生み出すために、日々情熱を注いでいる。まだ世の中にない価値を自分の手で届けたいモチベーショントレンドに影響を受けやすい領域だけに、プライベートで買い物する際にも担当分野の製品をチェックするなど、アンテナを張るのが得意。トレンドには誰より敏感日ごろから情報収集もスキル技心新製品を生み出すには粘り強さが必須だが、会社の意向やトレンドの変化によって方針が変わった際に、柔軟性を持って対応する姿勢も大切だ。粘り強さと同時に切り替えの早さも大切素質研究職、開発職、営業職、品質管理職など、職種によって求められる動きは異なる。体力という側面でも、自分に合った選択をすることが肝心。企業での働き方は多様毎日の動きも異なる体力体医療に直接関わる以外にも、薬学の専門知識を生かす道はある。健康や美に貢献する食品・化粧品メーカーで働くことはその一つだ。80
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